ピエゾについての補足


ピエゾについて、文系の私が理解している範囲で、少し詳しく説明します。
ピエゾはなかなか奥が深いようです。ここで説明する内容よりもっと深く知りたい向きの方に私から取り出す引き出しは、今のところ残念ながらありません。

ピエゾ動作原理画像 結晶構造の物質のなかには、圧力や曲げる力を加えると、分散して安定していた電荷が一定の規則性を持ってある面に偏って現れるものがあります。言葉にするとややこしいですが、力を加えると電圧が発生するってことですね。この発生した電気のことを「圧電気」、現象のことを「圧電気現象」といいます。(ちなみにこの物質に電圧を加えると形状が変化します。)
圧電気現象を得られる結晶体のことを「圧電素子」=「ピエゾ」って呼びます。 要は、ピエゾ・ピックアップってのは、圧電素子でボディなどの振動を電気信号に変えるものなわけです。

圧電素子としては水晶が良く知られており、水晶発振子としてよく使われているもののようですが、ピックアップへの使用には向いていないようです。
現在製造されている圧電素子には、ロッシェル塩、チタン酸バリウム、PZT、ADP(リン酸二水素アンモニウム)、KDP(リン酸二水素カリウム)などがあるそうで、ピックアップにはこれらのうちのどれか、若しくはいずれかを併用して用いられているようです。
より高感度なものがセンサーとして軍事用に開発され、それがピックアップ用途に使われることもあるそうですので、さまざまな圧電素子が現在も作られ続けているものと思われます。

ピエゾ・ピックアップは、マグネティック・ピックアップに付きものの電磁誘導現象とは無関係なので、圧電素子そのものが誘電ノイズを拾うことはありません。
また、弦やボディの振動をダイレクトにピックアップするため、音の立ち上がりがとても鋭く、自然なサスティンが得られるという性質を持っています。
反面、振動に対して非常にセンシティブなため、アタック時の雑音、本来の音以外に発生するボディの振動や、フィンガー・ノイズ(弦を指でこする音)などが強調され、耳障りに感じることもあります。

バーカスベリー画像 以前はピエゾ・ピックアップはほとんどがコンタクト・ピックアップと呼ばれるタイプで、(バーカスベリーのブリッジに貼り付けて使用するコンタクトピエゾ・ピックアップなど)圧電素子を内蔵したセンサーをアコースティック・ギターなどのブリッジ部に貼り付けて使用するものでした。
このタイプはギターに対して大きな加工をしなくても取り付けられるのがメリットですが、取り付け位置によって大きく音が変化するため、ベスト・ポジションを探すのに苦労することが多いようです。

その後エレクトリック・アコースティック・ギター(いわゆるエレアコ)が台頭したのは、オベーションに代表されるブリッジ内蔵式のピエゾ・ピックアップを組み込んだギターの出現が大きく影響を与えたものと思われます。
ブリッジ・サドルの下にピエゾ・ピックアップが内蔵されていますので、安定した音量、音質が得られるのが特長です。
やがて、サドルの下に圧電素子を仕込むタイプのリプレイスメント・ピエゾ・ピックアップ(後付けピックアップ)が各社から登場し、既存のアコースティック・ギターにもブリッジ内蔵式のピックアップが取り付けられるようになりました。

プリアンプ画像 プリアンプの一般化もピエゾ・ピックアップの普及に貢献しています。
現在市販されているブリッジ・インサート型ピックアップを装備したエレアコのほとんどに、プリアンプは内蔵されています。
ピエゾ・ピックアップはマグネティック・ピックアップに比べると出力が小さく周波数特性も低音域が弱い傾向にあるので、ライン上のノイズ混入を防ぐためのゲイン・アップと、音質補正をしてやるわけです。
リプレイスメント・ピックアップにも製品のパッケージにプリアンプが含まれている場合が多いようですが、別売りされているアコースティック・ギター専用プリアンプにも、非常にクオリティの高いものがあります。

エレキ用ピエゾ画像 最近ではエレクトリック・ギター用のブリッジに、ピエゾ・ピックアップが内蔵されたもの(ゴトー製のチューン・オー・マチック・タイプ・ブリッジなど)なども登場し、数は少ないですが、一般的なマグネティック・ピックアップとインブリッジ・ピエゾ・ピックアップを併用するエレクトリック・ギターも市販されています。

コンタクト・ピエゾ・ピックアップは、それ自体は微弱な信号しかないため、何メートルもケーブルを引き回すと外来ノイズを拾ってしまいます。
また、後付けピックアップは本体に音色をコントロールする機能がついていない場合がほとんどです。これらの問題をクリアするためには、プリアンプやEQを使用するのが一般的でしょう。
ピックアップ本体の弱い信号を増幅して、外来ノイズに強く、音量コントロールを取れるようにするのが、プリアンプやバッファーと呼ばれるハコです。
ピックアップとプリアンプは、距離が短いほど外来ノイズには有利になりますので、なるべく短い距離で接続すると良いでしょう。